俺の舌癌

海外赴任先のタイ、バンコクでステージ1の舌癌が発覚した男の手記。

疑惑

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俺の予想は見事に外れ、処方された薬は全く効かなかった。

塗り薬も、飲み薬も。

一体、あの薬は何だったのだろう?本当に薬だったのか?

さすがにここまで来ると少し不安になって来る。

不安に拍車を掛けるのが「痛み」だ。

ここ最近、益々痛みが増している気がする。

 

 今回ばかりは、しっかりと医者からの説明をきちんと理解したいので、R(彼女)にも付き添ってもらい、通訳を頼むことに。

 

先日の薬が全然効かなかったから又来たという事を窓口で伝え、ロビーでしばし待機。

今度は前回と違う診察室へ通され、前回とは違う医者が出て来た。

 

今回は2−3分、入念に舌を調べ、首を触り、いつから痛いのか?どのように痛むのか?質問攻めにあう。それをRに訳してもらい、医者はその都度大げさに頷き、カルテに暗号のような文字をスラスラと書いてこちらを見て、真剣な面持ちでゆっくりと話し始めた。

 

彼女の顔が少しずつ曇っていくのは明らかに解った。

最後に医者が、彼女に全て話したからあとは彼女から全て聞いてくれ、と俺に告げ、診察室を後にした。

 

俺「彼、何だって?俺、何か大きい病気?」

 

R「普通、口内炎は数週間で治るものなんだって。

彼は専門ではないから詳しいことは解らないとは言ったけど、、、もしかすると舌の癌かもしれないって。。。」

 

俺「、、、それで?」

 

R「今日、抗生物質を出すからこれを1週間飲んで、来週又来てください、だって。」

 

俺「、、、それで?」

 

R「それでも、痛みや腫れがまだひかないようなら検査の為に少しだけ切って詳しい検査をしましょう、だって。」

 

俺「えーーーーーーーーーーーー、切るの?嫌だよ!」

 

R「大丈夫だよ。検査用にほんの少し切るだけで、すぐ終わるんだって。全然痛くない、って言ってたよ。それにちゃんと検査して、なんの病気かちゃんと調べなきゃ」

 

俺「。。。。。。。。。」

 

 

実際は、こんなにスムーズな会話ではない。

Rは、日本語が話せるが、俺と同じように専門医療ワードまでは解らないのだ。

病院のロビーで、上のような会話を20分程度、繰り返したと思う。

 

しっかり検査をしろ、というRと、検査だろうが何だろうが、癌という言葉以上に「切る」というキーワードにビビりまくりの俺の押し問答。

昔から注射が本当に苦手なのだ。痛いのだけは本当に勘弁してほしい。

 

その晩から、タバコも酒も控えめにし、抗生物質が劇的に効く事を祈り、1週間後、「問題なさそうですね。」と医者が笑顔で俺に告げてくれる事を願いながら、日々を過ごすことになる。

 

2017年、6月中旬。